2022/02/14

この日のはなし ー ダウンタウン巡り

 
主要な支払いが大方済ませられるから、
月に一度、ダウンタウンにある色々な会社のブランチを回る。
今日は、いつものブランチに加えて、エアメールの会社に用事があった。

通常使っているDHLブランチは、事務所の近くにある。
今日もいつも通り、そのブランチに行くと、
扉は固く閉ざされていて、ガラス越しに配達用の段ボールが二つ
椅子の上に置きっぱなしになっているのが見えた。
どこかにスタッフが出かけてしまったのか、としばらく待ったけれど
誰かくる気配もない。
仕方ないので、隣の携帯ショップへ入ると、
おじさんと若い女の人が店の奥に座っていた。

隣の店の人がいないから、連絡が取れないか、と尋ねる。
こちらでは、よくある手段だ。
大体、近所のお店同士は仲がいいから、連絡先を知っていることが多い。

でも、携帯ショップのおじさんは隣の店のスタッフの電話番号を知らなかった。

どこの国から来たのか、とか、どこで働いているのか、とか
全く話す必要のない、でもよくある質問を一通りされる。
その後やっと、電話をかけ始めてくれた。
が、それはDHLスタッフへの電話ではなく、建物のガードの電話番号を入手するため、
携帯ショップの他のスタッフに確認する電話だった。
建物のガードの電話番号を入手すると、やっと、
建物のガードからDHLスタッフの電話番号を聞き出し、本題に入る。

電話は通じたけれど、DHLスタッフのお母さんがコロナにかかったから、
出勤できない、とのことだった。

一体、あの椅子の上に乗っている段ボールはどうなるのだろうか、とか
そんなことを携帯ショップのおじさんに訊いても仕方がないので、
よくよくお礼だけ言って、落胆しつつ店を出る。

ダウンタウン巡りの店が、一件増えてしまった。




郵便局周辺には、主要なエアメール業者のブランチが点在している。
まず、アラメックスへ入る。
アラメックスのおじさんは、要領を得ない感じで、
日本への郵送が何日かかり、いくらなのかを、
送付品を取り出して確認してもらおうとするのに、
ずいぶん適当な返事しか、してくれなかった。
おそらく、カウンターに乗っていた誰かの大きな3つの段ボールを
先に片付けたかったのだろう。

早々に退散し、次の店へ行く。
TNTかFed EXかDHLか。全ての店が同じ通りにあるのは
ヨルダンだからなのかもしれない。
ありがたいけれど、判断に困る。

結局、いつも通りのDHLに入る。
DHLの受付のお兄さんはアラメックスよりも
まともに取り合ってくれた。
おそらく、カウンターの上に乗っていた他の荷物が
すでに処理された後だったからだろう。

淡々と、いつも通りの順序で、きちんと物事が進んでいく。
そんな当たり前のことが、もはや、ありがたい。

何事もなく、送付を終えると次は、各種支払いが待っている。
通信会社を梯子する。

どこの会社でも、入り口でワクチン接種証明書を提示し、
番号札を取って、順番を待つ。
番号札なんて10年前はなくて、よく横入りされた。
番号札が出るありがたさをひしひしと感じ
修行僧のように一点を見つめて、ただひたすら自分の順番を待つ。

窓口では、無理難題をふっかけるおじさんとか、
ここで言っても仕方がない文句をひたすら言い続けるおばさんとか、
登録番号を控えていなくて、窓口で親戚に電話をかけるおばあさんとか、
いろんな人がいる。

そんな人たちに、能面のような冷淡、もしくは冷静さで、
辛抱強く処理をしようとしている窓口の人々に、
いつもだけれど、小さく感動する。
効率がよく、できるだけ手早く済ませようとか、
そういうことは、あまり重要ではないような人たちに、
必要なサービスをするのは、想像するに、かなり大変に違いない。

自分の順番が回ってくる前に、必要な情報をすべて手元に準備しているのは
私ぐらいであるという事実が、何だか馬鹿馬鹿しく思えてきたりする。
親戚に電話するのを待ったり、文句を聞いている間に、
窓口の人たちが休憩しているのだとしたら、私は
あまりいいお客と認識されていないだろう。

それでも、さっさと済ませたい私は、ある意味こちらもまた冷淡に、
必要書類を手元にすべて揃えて、窓口に立つ。
窓口の人を休ませない、意地悪い客だ。

最後の支払いを済ませて店を出て、事務所に戻ろうとする。
時間を確認しようと思ったら、携帯電話がない。
さっき支払いをした時に、携帯電話に入れていた登録番号を
窓口のお姉さんに携帯ごと渡して照会してもらったのを思い出す。

慌ててお店へ戻ると、立派な弧を描く眉毛と
見事なアイラインの下で、涼しい視線を私に向けたお姉さんは
能面のような顔をしたまま、
申し訳ない、ありがとうございます、と言う私の顔をガン見しながら
携帯電話を手渡してくれた。

複雑な心境だ。

準備して出かけても、突然のシステムエラーやら、
担当者が不在やら、プリンターが故障してレシートが発行されないやら
予想していないことが起こることは往々にしてあるので、
すべてがスムーズに行くと、心のどこかでほくそ笑む自分がいる。

でも、今日みたいに、最後は自分がミスをすることもある。

予想するさまざまな落とし穴をそつなくクリアするための
ある程度以上の経験をして、落とし穴にさえ慣れ、
それなりにこなせるようになった。
そう、つけ上がったな。帰りの道すがら、反省する。

用心と慣れの先にもまだ、乗り越えるべき障害があるとしたら、
それは、自分自身の心持ちである。


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