2012/01/08

馬とロバ


アンマンから北西に少し上がった
サルト、という街の郊外へ往った
陶芸家の人のお宅


ドイツ人とギリシャ人のハーフの彼女は
ヨルダン人と結婚した
そして、3人の息子に恵まれ
ヨルダンに住む


陶芸の土をもらうために訪れたのだけど
本当は、ロバに会いたかった


でも、ロバは年末に亡くなってしまった
18年生きた
ロバは30年近くは、生きる
どうして早く死んでしまったのか、といったら
いつも、大好きな馬と一緒にいたからだった
馬のえさはロバには栄養過多で
だから、長くは生きられなかった
広いロバと馬のための運動場の真ん中に
ロバを埋めた
馬は小屋に入れられていた


外に出たいので、どんどんと壁をたたく
アーチ型の窓から
頭を出して様子をうかがう


馬を触るのは初めてだった
賢そうな顔をしていた
少し怖かったから
とりあえず、頭で馬と交信してみた


庭は広くて
オリーブ畑と大きな樫の木
樫の木には昔
ツリーハウスがあって
小さな頃の息子さんたちが遊んだそうだ


斜面にそって植えられたオリーブ畑の下には
洞窟があった
夫婦で作っていった家が3件も建っていた
2件は工事中だったけれど
ガラスの嵌められていない窓からは
遠くの緩やかな丘が見えた


サボテンの温室もあって
種から育てた大量のサボテンが
床や棚に並べられる
日本産のサボテンもあった


外で食事をいただいて
家の中ではお茶をいただき
シェルターから救い出した
これも賢そうな、でもアラブ人嫌いの犬が
私の様子をうかがっていた


日が傾きかけた窓の向こうで
久しぶりに小屋から出してもらった馬が
運動場には往かずに庭を歩き回る
息子さんや旦那さんが
運動場に入れようといくらかの格闘をしていた


帰りがけ
馬は近所の子供たちにちょっかいをかけられていた
子供たちは持っているおもちゃを
馬の鼻に近づけたりする


つかず離れず、戯れる
それほど嫌そうでもなくて
まんまるの目で
二人の子供を見つめていた





2012/01/05

小躍りしたい衝動



仕事先は2日から始まっていたけれど
授業はないのでお休みをもらう


仕事の計画書類の書き直しやらをしていると
家の中にひきもりがちになる


1日や2日間、家から一歩も外に出ないことも、よくある


久しぶりに外へ出る
外は確かに寒いけれど
身体の芯がきゅっと縦に引っ張られる
冬の空気が気持ちいい


よく背筋を伸ばす


無礼なアラブの男たちなど気にならない日は
何だか少し、いいことがありそうな気がする




先日、仕事の関係でUNRWAの事務所へ往った
مكتبة وكالة منطقة شمال عمان
アンマン北部地域の事務所
本来ならば、ただのボランティアが
初めから一人だけで往くようなところではないのだけれど
仕事の都合上仕方なく、足を運ぶ
実質、今年の仕事始めだった


いくら冷たい空気に気が引き締まるといっても
同時にいくらか、緊張してしまう


ヌズハという地域のUNRWAの学校の横に
事務所はあった
キャンプと似た風景
テスト帰りの子どもたちが道に溢れる
八百屋のおじさんが興味深そうにこちらを見てくる


どうも、キャンプに似た道に
こんなときばかりは、安心してしまった


事務所は思っていていたよりもずっと、こじんまりしていて
その事務所の場所を教えてくれた
バカアキャンプ内UNRWA事務所のおじさんが
スタッフと世間話をしていた


おじさんが私の顔を覚えていてくれる
おかげで、さっきの緊張なんて嘘のように
話はさらさらと滑らかに進んでいった




どこの国でも同じようなことはある
ここの国の多くの人も、当然
できるだけ責任は負いたくないし
できるだけ楽をしたいし
できるだけいい格好がしたい


それを前提に話をしていかないと
いらいらしたり、落ち込んだりすることばかりだ


ただ、それを前提にしていて
前向きな姿勢の人に会えた時には
喜びが大きい


聡明で、でも優しそうな女性スタッフと
話ができた
いくつかのアドヴァイスをもらい
次のアポイントメントも取る


帰り道、小躍りしたいほどうれしかった


確かに、ヌズハの道にも
無礼な言葉をかけてくるアラブの若者は居る
けれど、こんなときばかりは
気にならない