2008/05/27

三島由紀夫のはなし


前回載せた、「レター教室」、読み終えました。

仕事へ往く電車の中で、全部読み終えてしまいました。
なかなか、面白かった。しかも、興味深い、という面白さではなく
むふっと、笑ってしまう部類の面白さでした。

三島由紀夫と云うと、「金閣寺」や「潮騒」などなど、
重厚な文章と繊細で艶美な描写が印象に強い。

ですが、どうもこの本は、そう云う類のものではなく
どちらかと云うと下世話な部類の本でした。
下世話で、ある意味生き生きしています。

5人の人物の手紙のやり取りで
ストーリーが展開してゆくのですが、
それぞれ何かしらの関係性がある5人が
それぞれの立場から、起きている問題や悩みを
相手に向けて、都合のいいように書いている。
茶番に近いのですが、文豪が書く茶番は
人物の性格や、それによる言葉の使い方が
徹底しているので、ほんとうにおかしい。

手紙調で話を展開させてゆく小説はたくさんありますが
だいたいは語り口調が切々と訴えてくる
涙もの、が多いような気がします。
そういう、文体を使った(云い方は悪いですが)
セコいやり口ではないところも
私にはツボのようです。

三島由紀夫は、確かに文豪でした。

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