2011/07/11

「日本の名随筆」を読む



今住んでいるアパートメントには
日本の本がたくさんある

何もする気にならない夜
何を読もうか図書室のようになった一室を
隅から隅まで、点検する

見慣れた背表紙に手を伸ばす
そういえば船便にもこのシリーズの2冊ばかりを
入れてきているはずだ

作品社が出している「日本の名随筆」のシリーズは
一文字のものが100冊
熟語のものが100冊
シリーズで出ている
ヨルダンで見つけ出した一冊は
「宙」 1988年の出版だ

随筆集など読もうとすると
雑多な編集だったりして
目的の一編を読んだら
もう他には読む気がわかないものばかりだったりする
でも、この本たちはどのテーマをとっても
飽きずに読むことができるものばかりだ

言葉を主題にして
様々な著者の随筆が収まっている
だから、本職であるエッセイストもいれば
人類学者や地理学者、写真家や画家、
様々な職業の人々が書く
質の高い随筆を読むことができる

多方面からの視点を得ることができるのが
一番の魅力なのかもしれない
時折、そのテーマが合う人が居れば
誕生日に渡したりもしていた

「宙」には
萩原朔太郎や筒井康隆、稲垣足穂から
寺田寅彦、花田清輝、澁澤龍彦、梅原猛、中村元から小尾信彌など
多岐にわたる著者が名を連ねている

一日の終わりに宙のことについて
ふらりと考えたりする

見逃していた詩が表紙裏についていた

宮沢賢治「春と修羅」より

有明

起伏の雪は
あかるい桃の漿をそそがれ
青ぞらにとけのこる月は
やさしく天に咽喉を鳴らし
もいちど散乱のひかりを呑む
(波羅僧羯諦 菩提 薩婆訶 )

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