2009/04/27

物語と思想


ここ数ヶ月ほど、考えてみたらまともに本を読んでいなかった。
心の余裕もなかったし、
自分で本を作っているのもあってか
今は、いい、という時期だったような気がする。

教育機関のありがたいのは
必ず本があること。
こちらでは英語の本さえあまり手に入らないし
本屋自体がほとんどない。
そんな状態の中で、図書室など私にとっては、天国だ。

日本に居る時は、本屋で表紙だけを見て
印象に強い写真に心惹かれたものの
単行本で値段が高いのもあって
読まなかった一冊。
久しぶりの池澤夏樹だった。

もう池澤夏樹は、いい歳だ。
でも、人と思考と関心が、いつもいつも広がっていて
それが小説に還元されている。
方向性は若い頃から変わっていないのだと思うのだけど
その、目指しているものや、関心のあることが
きっと、自然と寄ってくる人なのだと、思う。

それは、自分のスタンスがはっきりしているからで
とてつもないパワー
ただ、きっと本人は、流れるようにしなやかなのだろう。


今回の話は、崩れてしまった家族の再生への道のり
それだけだと積み木崩しみたいなのだけど
その過程で
生き方を提示しているヨーロッパのコミュニティーや
インド仏教やチベット仏教の思想が入り交じっていて
世界観が立ち上がってきている。
家族それぞれの視点、歳を経た迷いや悩みと
解決への光が、
弱く、太く、様々な色あいで
でも、真っ直ぐに貫いている、本だった。





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