2011/09/18

Faureを聴く



震災のチャリティーコンサートがあった
Yasmin Alamiという
ヨルダン人の女性ピアニストのリサイタルだった
本当に小柄な方だった


会場の入り口には被災地の写真が飾られる
相馬市長からのメッセージも
英語とアラビア語の翻訳をつけて
掲示されていた
達筆な手書きのメッセージ


ベートーベンや「さくら さくら」の変奏曲のあと
被災地の映像とともに
Faureのノクターンが演奏される

和音も旋律も波打つような
Faureらしい繊細で美しい曲だ
聴くたびに、秋の夜中を思い出していた
しんとする、ということばの
しん、が、聴こえるような夜

でも、この曲はあまり得意ではない
楽譜も持っていたから
いつか弾いてみたい、と思ったこともあった
でも、ある時から
どこか、ぞっとするような空気が感じられるようになった
聴くと、単純に気が塞ぐ
初めの、音数の少ない
小さなフレーズだけでも
反射的に身構えて聴くようになった曲だった


選曲はある意味、正解なのかもしれない
生の演奏が生の映像とともに


最後に様々な国の人が
メッセージを持った写真が流される
本当にいろいろなところの人々が
それぞれの、そして一つの願いのための言葉を胸の前に掲げて
写真に収められる


曲の終わりは、決して、明るくはない
納まるべき、長調ではない和音は
落ち着きを払い、そして重い


その曲は
新たな意味を抱いて
感覚を刺激する


次にFaureを聴く時には
間違いなく、またあの映像を思い出すだろう





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