2016/07/09

夜中の楽しみ


 ラマダンが終わって、イードというお休みの日ができる。
 バングラの事件の余波で、アンマンに留まる。

 夜、窓から見えるアンマンの街は、
 いつも通り、無数の街灯と点在するモスクと、それから窓から漏れる光で
 黒い丘のシルエットに、オレンジ、緑、白にきらめく。

 お宅にお邪魔したり、家に人を招いたりして、
 それとなく、イードらしい暮らしができている。
 ありがたいことだ。

 相変わらず夜は長くて
 これでは仕事が始まったら大変だと、がんばって眠ろうとするのだけれど
 外が心地よく騒がしくて、眠れない。

 久しぶりにピアノでコード進行をさらってみたりする。
 窓際に置かれたピアノを弾きながら、モスクの緑と
 遠い街並の灯りをみる。

 和音の面白さを、今更知る。
 
 調によって、性格というのがあるのだろうか、と時々思う。
 この調はこういう独自の色味や特徴がある、というようなもの。

 基本はずらしていくだけだから、均一であるはずなのに
 例えばクラシック音楽には
 作曲家の好みの調があって
 どうしてこんなにフラットばかりつけるのだろう、と
 譜読みに時間のかかる私は、頭を抱える。

 そんなことをしていたら、また夜は更けていって
 アザーンが流れる。

 こちらの人は、絶対アザーンを音楽とは、云わない。
 でも、アザーンの声をピアノで拾うことができる。
 夜中のアザーンをこそこそと、弾いてみる。
 調はないのだけれど、旋律に独特の響きがあって、面白い。

 眠れない夜中の、内緒の楽しみ。


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