2022/02/08

この日のはなしー 渡る世間は鬼ばかり

 
聞いたことを書き残しておく。

親族内の、そして女たちの諍いについて
もう、本当に大変なんだ、とばかりに
報告してくれる。

親族の一人が、パレスティナで生まれ育った人と結婚した。
プロポーズをされた時、将来パレスティナに住まなくてはならないなら
結婚しない、と断った女性に、
ヨルダンに住むからと懇願して、結婚に至った。

でも、結婚して5年、最近夫はしきりにパレスティナに住みたい、と
妻に迫ってくる。
パレスティナでも、かなり事業で成功している夫の両親、
家業を継がせるため、長男である夫とその家族を呼び戻したい、
という思惑がある。
しつこくずっと、電話やらチャットやらで、
パレスティナから連絡が来る。

今まではヨルダンに遊びにきたら、家に泊まって行った義母が
最近家には泊まらない。
あの妻なんか置いて、パレスティナにくればいい、と
義母は夫を唆しているようだ。

これで夫を一人でパレスティナに行かせたら、
きっとあの両親は2人目の奥さんを見つけてきて
楽しく暮らすに違いない、そう思うと
女性は夜も眠れなくなってしまった。

似たようなはなしを、以前耳にしたことがある。
両親が残っているシリアへ戻ってくるよう、父親から再三
連絡をもらっている夫は、家族でシリアに戻ることを考えていた。

旦那さんだけ戻ってもらったら?と私が言ったら、
そうしたら絶対、義父は向こうでお嫁さんを用意するに違いない、と
話し相手である奥さんは泣き出した。

一夫多妻制では重婚の罪がない、というのが
経済的な不安などよりも、愛情の問題として
重くのしかかってくる厄介な制度である、ということに
その時初めて気がついて、どうも私もまた、色々と
淡白な人間になってしまったことに、気付かされたりした。



パレスティナにはなしを戻すと、
その義母のパレスティナの家の周辺には、
同じ親族が多く住んでいる。
嫁いできた女たち、同じ土地で育った人と結婚した女たち、
その2種類の女たちが一同に集まったりする。

コロナ禍でも大祖母の命によって、一族の女たちが集まった。
その女たちの一人は、少し体調が悪かった。
けれど、日頃から陰口を言われがちで、好かれていないことを
薄々感じていた彼女は、断ったら断ったで、
色々と詮索されるのが嫌で参加した。

2、3日後、集まった女たちの一人がコロナに感染したことがわかると、
集まった女たちは、一斉に彼女を責めて、
電話やら噂やら、非難の声をたっぷり伝えてくる。
陰性証明を取って見せても、事態は好転しない。
いつの間にや、女たちのいじめの規模が大事になっていった。

しまいには、大祖母が、自分の孫にあたる彼女の夫に、
あの女と離婚しなければ許さない、と言い出した。

呆れた夫は今のところ、その女たちを放置して、平安な時間を
なんとか手に入れようとしている。

その夫婦は、ヨルダンにやってきてこんな愚痴をひたすら、
遠い親戚に話し続けるのだった。


それはなかなか、えぐいはなしだ。

戦ったり守らなくてはいけないことなど
自分たちの周りの、もっと別次元でいくらでもある
パレスティナという土地なのに、
女たちにとっては、周辺で戦闘が起きようが、封鎖されようが
ある意味関係ないようだった。


日本には有名な長寿ドラマがあって、
渡る世間は鬼ばかり(生きていく中で会う人々は皆、ジンニーに思えるぐらい
生活の中の人との関係は一筋縄ではいかない、
という感じの意味の諺だ、と意味を説明してしまったけれど
考えてみたら、「渡る世間に鬼はなし」だった)
なんて言うぐらいだから、世界中そんな話で溢れているのよ、と
コメントしておく。

個人的には、親族の女たちから無視されつつある女性に
夫がちゃんと肩を持ってくれているのが、よかった、と思ったりする。
家長とか、男系とかが大事なのもさることながら、
何よりも、私の目にはマザコンとしか思えないような
男たちが結構たくさん、いるからだ。




夜遅くに、スタッフから写真が送られてくる。
私が好きそうな感じだったから、と。
よく、私の好みをわかっている。




とても素敵な写真なのだけど、一緒に送られてきたもう一枚はなぜか
このアングルの手前に、本人の顔がしっかり、自撮りで入っていた。

写真にツッコミはするけれど、もう本人に
つっこまなくなったのは、
一周回って、なんだかもはや、可愛らしい、と
思えるようになったからだ。


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