2011/11/15

歩いてみる

やってみよう、と長らく思っていた
仕事場からの帰り道を歩いてみる


google earthによると
標高差500メートルを越える
坂道を下って
毎日出勤している
距離にして8キロ強


出勤はバス
坂道を転がり落ちるようにして
バスは目的地のバカアキャンプへ往く
毎朝少し、耳が痛くなる
ものの10分ほどで500メートルも下るからだ


その道を登る
久々の長い散歩は
正直少し、つらかった
ひたすら登りなのもそうだけど
車の交通量も多くて
排気ガスをまともに吸うことになってしまうからだ


この道は苗木屋さんが多い
素焼きの鉢や水差しの並んだ店もある
いつもバスの窓から見ていて
気になっているものがたくさんあった
だから、カメラを持って歩く


空気はすっかり冷えて
特に風が強かった
ただ、苗木屋さんの店先には
今からもう冬なのに
マーガレットからブーゲンビリア
バラやパンジー、そして菊まで
さまざまな鉢植えが並ぶ


ヨルダンで一番気に入っている木がある
名前は分からないけれど
北部では比較的よく見る
色々な形と大きさのその木がいたる所にあって
徒に写真に収める


アパートメントの近くのロータリーについた頃には
すっかり疲れてしまった
ロータリーの先もまた
坂道だ


考えてみたら
こちらの人は足が速い
特に男性は
私をさっさと抜かしてゆく
みんな坂道に慣れているのだ


いつもだったら躍起になって
抜かされるまい、と歩いているけれど
今日はもう疲れてしまって
男の人たちのすり減った靴底を見ながら

のそのそと家への坂道を登った

2011/11/09

国境

ヨルダンの北部、イスラエル、シリアのボーダー


イスラエルとの国境は枯れた川の跡がある渓谷だ
谷間の急な斜面にしがみつくような道には
たくさんのcheck pointがある
銃を抱えた兵士がいる
携帯をいじっているpointもあれば
パスポートの提示が義務づけられているpointもある
いくつもの見張り台


高いフェンスと有刺鉄線
シリアとのボーダーには兵士と遮断機がある
イスラエルとのボーダーにかかっていた鉄橋は
崩されていた
橋から伸びる道は草で覆われて
遠目からではもう、よく見ることができない




遠くにはガリラヤ湖が見える
周囲には白い高い建物が連なる
ヨルダンならばアンマンにもないような
近代的な建物の影だ


渓谷の先の台地はそのままゴラン高原に続く
ヨルダン側からでは
ただただ、何もない緩やかな丘しか見ることができない
ヨルダンの斜面と同じように
うねる道をぽつぽつと、車が走る


渓谷の底、川の跡は緑が深い
バナナの畑や真っ赤なブーゲンビリア
高いナツメヤシの木
その向こうに、ゴラン高原のはしっこが立ちはだかる


3つの国の国境の土地も今は秋で
南国の植物たちとともに育ったオリーブの実が
収穫の最盛期だ
何とか犠牲祭で食べられることなく生き延びた
ヤギや羊たちが
まだ残った草を懸命に食べながら歩く


日はすぐに傾き
影は濃い
空はずいぶんと青い



アンマンなんかよりずっとあたたかで
おだやかな秋の田舎の風景







2011/11/07

ダナの谷






休暇に入った
仕事が始まったから初めての長い休み

ダナ公園へ往ってきた
ヨルダン南部、死海とタフィーラの間あたりにある
岩ばかりの山の中


ダナ村を出発するときの標高は1200メートルほど
ゴールとしたロッジまで1000メートル近い標高差を
15キロほどの道のりでひたすら下り続ける


周囲をほとんど生き物の気配が消えた山に囲まれた
水のない川の跡を辿るように道は続く
ツバメに似た飛び方をする鳥が空に居る

それだけ

よく見ればトカゲやてんとう虫も居る
けれども
緑の色も褪せた植物もまばらだった

砂利に足を取られないように注意して歩く
足音だけがよく、響いていた


5時間近く、歩き続けた


ゴールのロッジはRoyal Society of Conservation of Natureが運営している
エコ・ロッジだった
夜の灯りはろうそくだけ
客はたくさんのろうそくに囲まれて
食事をとる


そう、ずっと昔はこうして
歩き疲れて家に帰り
暗い灯りの下で食事をとって
暖炉の周りでお茶を飲みながら話でもして
そして、朝までよく眠ったのだろう


西洋人ばかりの客たちが
わずかな灯りの元
色々な言葉で談笑している様子を
昔の映像でも見るように眺めた



久しぶりに、観光客の気軽さで
この国を見られたような気がする

2011/10/29

アンマンマラソン


アンマンマラソンにお手伝いに往ってきた
南部の街、カラクの障害者施設から参加しにいらした方の伴走をした


よく晴れて、でも空気の冷たい
マラソンにはちょうどいい天気だった


一緒に10キロを歩いたアスマさんは
私の下手なアラビア語があまりわからなかった
彼女もあまり話さない人だ
顔合わせをした時
とても不安な顔をしていた


施設のボランティアは
手を握っていれば安心すると思う、と云う
だから、ずっと手を握って歩いていた


不安な表情はずっと消えない
途中、彼女は右脇腹を押さえて
座り込んでしまう
おなかが痛いのかな
何か云っているけれどわからなくて
困り果てた


何度か休憩をして
おんぶをしようと思ったけれど
うまく往かなくて諦めた
だましだまし、歩く




ゴールはアンマンのダウンタウンにある
ローマ劇場だった


ローマ劇場が見えた頃に
一緒に伴走をしてくださっていた方が
腹が減った、とシュワルマを買いにいった


食べますか?
大きく彼女はうなづく




シュワルマをうれしそうに食べる彼女を見ながら
ずっとおなかが空いていたのかもしれない、と
何だか心配したのがおかしくて
随分笑った


彼女が食べていた時の他は
ずっと手を握っていたので
手にだけはたくさん汗をかいた


ずっと手をつないでいたなんて
何とも素敵だった、と、思った

2011/10/21

あったかそうであること

この2、3日
空気がすっかり冷たくなって
昼までも日の当たらない室内は冷えきっていた


できれば家でゆっくりしたい休日だったけれど
今週を逃したらしばらく往けない予定に気づき
慌ててスークへ買い物に往く


服や靴ばかりの青空市場が
金曜日だけ、開かれている
古着ばかりの市場


こちらの衣類の値段は
日本とほとんど変わらない
十分な冬服を手に入れるのに
正規の値段では、とても
買いそろえられない


コートが欲しいな
ブーツも欲しいな
靴下も欲しいな
セーターも欲しいな


古着なのだ
だから、まともなものを探すのには
それなりの努力と時間が必要だった
早く家に帰りたい
でも、もう少し探してみる


究極的に、冬服というものは
見た目が大切だと、思っている
それが、あったかかろうが、なかろうが
あったかそうであることが
私にとって重要だ


だから
あったかそうな色のコートを買う
あったかそうなだけで
実はそんなにあったかくは、ない
質の低いウールのけばけばコート


でも、それが目に入るだけで
きっと冬が越せると、安心する

2011/10/12

秋の味覚



仕事場からの帰り道
建物のすぐ外の屋台の果物屋さんから
柿をいただく
種がなくてよく熟れた
とてもおいしい柿だった


バスを降りていつもの坂道を登る
ここでもまた、果物が並ぶ



一つだけじゃ物足りない
2JDで柿を10個買って


ついつい買って、また買って
果物だらけになった


最近仕事場では事件だらけ
でも、とりあえず家に戻って
果物を並べて、満足する


単純に幸せだ

2011/10/07

夜中にまた、眼を醒ます

たぶん、なぜだかうまく眠れなくて
頭のどこかが冴えきっていたからだろう


目が醒める 4:17
今日は休みなのに


まだアザーンは鳴らない
アザーンまでには1時間近くある


遊びにきた人がへたくそだ、と云っていたアザーン




仕方がないので頭の中に流れる曲を検索して
動画で見ていた


白夜の空の様子
いつまでも揚がらない太陽
緑の丘陵地帯や凍った川
針葉樹の林


そういえば、と、思い出す
仕事先へ往く途中
急な岩場に男が一人座っていた
ぽつんと黒い服を着て


なんでそんなところにいるんだろう、と思った


よく見たら、彼の周りにはたくさんの羊が居た


羊の色は岩場の白茶褐色と同じ色で
動いていなかったら
きっと、分からなかった


なんて、乾いて白い土地にいるんだろう
杉の木の葉も、強い風に舞った砂がついて、白っぽい
きついピンク色のビニール袋だって
風で飛ばされていつの間にか
どことなく白っぽい


眼を閉じて
公園にあった、たくさんの大きな木を想像する
たくさんの濡れた葉やからまる蔦




いつの間にか、またうつらうつらして
へたくそなアザーンが鳴る


でも、このアザーンに慣れてしまった
音が大きすぎて
どうしたって聴いてしまうのだから


もう一度、濡れた木々と
それから、昔よく往った植物園の
冬の熱帯雨林の温室を
思い出しながら、眠る