2014/09/16

久々のラヒリ


ヨルダンも秋の気配が漂い
朝の光が少しずつ傾いて
雲が朝焼けに色づく

ありきたりだけれど
本を読むのにいい時期になってきた

短編を持ってきていた
表紙がきれいだ、という理由が主だけれど
集中力がないから
長編を読み終えられない、というのも
ひとつの、理由

女性の作家でバランスがいい
甘ったるくも感傷的でもない人を探すのは
難しい

女のなんたるかを
改めて教えてもらおうとは思わない
自分だけで十分だ

それでも
時々、小さな存在の
一人の女性を
特別な重さも特別な卑下もなく
無駄な愛情や同情もなく
描いている作家がいると
無条件にうれしい

「美しい子ども」というクレストから出ている短編集
2作目がジュンパ・ラヒリだった
久々の名前に
本人の美しいアーリア系の顔を思い出す

自分を頼りにやってくる
若い同じ国からやってきた男性に心惹かれながら
結局移り住んだ国の女性と結ばれていくのを
夫も子どもいる身で
節度ある嫉妬を抱きながら
見守るしかなかった母親の姿を
子どもの視点から
適度な重さと適度な明るさで
描いている

短編のおもしろいところは
色や情景がより鮮明で
その断片が多くないところだ

はらはらと落ちた断片が
小さなまとまりのまま
まだ印象としてつかめる程度に
一つの形を成している

深みは作品それぞれだけれど
立ち上がってできる影は
必ずそこにあって
印象によって影が色づく

浅く緑ががった影が見える

ちょうど秋のヨルダンの朝の
どこか勢いをなくした
でも、穏やかな空と
よく似ている



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