おばあちゃんのところへあいさつに往く
県は違うけれど
隣の町に住んでいる
おばあちゃんはもう今年で88歳になる、確か
時々、一人でおばあちゃんのところへ往くと
昔の話を聞いたりする
膝の手術をしたおばあちゃんは
もともと膝が悪い
運動のし過ぎなんていけない
まだおじいちゃんが元気だったころ
毎朝裏の山へ散歩へ往って
ぐんぐん進むおじいちゃんに文句も云わず
ついていったのがよくなかったの
そう、おじいちゃんのことを少し、なじる
おじいちゃんはもう亡くなっていて
お土産に持っていったおまんじゅうを
封を切らずに箱のままお供えして
どうせ食べられないんだから
と、云う
それもそうだ
膝が痛いから
和式の便所には座れない
そんな話から
初めて洋式の便所を使った時のことを
思い出す
どう使ったらいいか分からなくて
便座の上にしゃがんだの
べトナムの公衆便所では
よく便座の上に足跡がついている
外国人が多い研修所でも
洋式トイレの使い方の説明文が
英語で書かれていた
なるほど、だって初めてだもの
わからないよね
はずかしいったらありゃしない
昨日のことのように照れ笑いをする
県庁に勤めていた頃
タイプの練習をするために
仕事の後に4時間も5時間も
勉強に往っていた
大変だなんて、親には云えなかったな
偉い人が出張に往くと
普通は仕事がなくなって暇なのよ
なのに、タイプができると
本人はいなくても
仕事は山積みになっていて割にあわない
だから、できるようになったけど
やめちゃった
聞いたことも見たこともない
菅沼式の和文タイプライターの
効率のいい使い方について
少しだけ説明をしてもらう
昼食を一緒に食べる
外のお店に出かける
おばあちゃんは意外としっかり
鳥唐揚げ南蛮などを食べていて
うどんをへたくそにつまむ私を尻目に
どんどん食べ進めていった
近くの席に
老人ホームから外での食事に来ていた
車いすの老人二人がいて
職員の人と一緒に
少し、食べている
時折その人たちの後ろ姿を見ながら
こんなしっかり食べられるんだから
ありがたいと思わなきゃ
そう、云う
食べられなくなったら
もうお迎えの時期だね
早くお迎えが来ないかね
膝をせっせとさすり
デザートの抹茶ゼリーを食べながら、云う
まだ、当分大丈夫だ
きっと2年後もしっかり今のように
お迎えが来ないかね、と
云っている気がする
わたしは私の親族の中で
おばあちゃんが一番立派でまともだと、思う
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