なかなか本の読む時間のない1年だった
おそらく、ここ10年で一番冊数は少なかっただろう
何度となく読み続けていた本を
また、新たな土地へ持って往って
もう一度読む、そんな年だった
いつもいつも
須賀敦子を持って次の土地へ往く
あんなに繰り返し読んでいて
詳細や云い回しまで覚えていたのに
実は核の部分は理解しきれていなかったことを
知ったのは最近だった
英語で教育を受け
フランスへ留学し
イタリアで結婚して家族を持ち
母国語をイタリア語に翻訳していた
須賀敦子の言葉への執着や原動力が
どこからきているのか
外国で暮らす人として
語学の資質もさることながら
人間性がいかに大事であるか
私は正直半ば、あきらめ気味だ
どうも、その土地や国や人との関わり方について
憧れることは勝手にできるが
指針にするには遠すぎる
やっと、そのことを知り
何が足りないのかも痛感して
身の丈に合った状況が今なのだと
妙に、腑に落ちている
10年以上読み続けて、やっと
知ってしまって、やはり
いくらかは悲しいけれど
ここでの生活がなければ、知り得なかったことだった
本を読むかわりに
家でよく、絵を描いている
描いている時は必ず
音楽を流している
出歩くのが他の国よりも難しいここでの暮らし
音楽だけはたくさん聴いた
好きな音楽が増えることは、随分と幸せなことだ
朝、晴れ渡って青い空と
スウェーレの坂道にしがみつく建物を見ながら
何度となく高木正勝のピアノの音を聴いていた
実のところ
それほど音と情景が合っているわけではない
むしろ、瑞々しい音の流れで
乾いた景色を中和することが
毎朝、大切だったようだ
埃まみれの街並も、煌めく音に色が変わる
考えてみると
湿気のある音を選んでいたようにも思える
James Blakeもしかり
Predawnもしかり
原田郁子もしかり
Alaa Wardiもしかり
これから年が明けて
この国の一番美しい季節がやってくる
写真でしか見たことがないけれど
青草が揺れる、見渡すかぎり緑の緩やかな丘が
待っているはずだ
きっと、その時には
今まで聴いていた音楽たちが
また、違う彩りで耳に響くはずだ
私は、それを、随分と楽しみにしている
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