ホーチミンの店先にレモンを見ることは少ない
ほとんど、見ないと云ってもいい
単純に需要がないのだと思う
すてきに酸味の強い柑橘類はたくさんあるからだ
でも、果物屋は美しい
特に、電球に照らされた果物屋
いまだ、珍しさに胸躍るたくさんの果物たちが並んでいる
夜の果物屋の情景を、「檸檬」の中にも見つけて、はっとする
バックパッカー通りで手に入れた戦利品
梶井基次郎を久しぶりに読んだ
もう、何度も読んでいるはずなのに
きっと初めて、と云ってしまうほど
「檸檬」は新鮮だった
話の始まりの心理や状況や、展開が
やっと、しっくりと心の中に染みていく
感情の色と、描写の色がちらちらと煌めいた
濃密な作品だった
この歳で初めて染み入るのも考えもの、なのかもしれないけれど
思いがけず、嬉しかった
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