しばらく家で猫を預かっている
毛足の長い黒猫で
臆病だけれど、甘ったれで
人見知りだけれど、慣れた人の膝が大好きな
すぐにぐるぐる云ってしまう
啼き声のかわいらしい
小柄な子だ
先月の半ばに
猫汎白血減少症という病気になってしまった
普通の成猫ならば罹らない病気らしいのだけれど
もともと丈夫な猫ではないので
見事にもらってきた
3日間吐き続け
2日間で注射を8本も打って
点滴も受けて
やっと吐くのは止まった
その後も食事はほとんど食べられなくて
また病院へ行った
3本注射を打たれ
やっと食べられるようになったと思ったら
今度は下痢がひどくて
家中がうんこだらけになってしまった
先週また、食欲が落ちてしまった
仕方なく今週病院に連れて行ったら
今度は口の中が荒れすぎて
潰瘍みたいになっている、という
また注射を2本打たれ
しょげ返って家に戻って来た
しょげているのは、猫も、私も、だ
飼い主に申し訳ないし
猫にも申し訳ない
夫婦で営んでいる近所の病院へ行くと
猫ではなく、私の名前が覚えられてしまって
猫用の籠を膝に乗せていると
テーブルに置きなさいよ、と云われる
気が小さい猫なので
ぶるぶる震えているのが籠の中から伝わってくる
なんだかかわいそうで
籠を抱えてしまう
よほど不安な顔をしていたのだろう
いつも、すぐ良くなるよ、と云いながら
病院の先生は手荒に注射を打ってくれる
いつもそう云ってくれるけれど
次から次へ
具合の悪い原因がやってくる
全く、いつになったら元気になるのだろう
途方に暮れる
仕事の休み時間を使って病院へ行く
病気の子どもが居たら
こんな感じなのだろう
病院が近くにあって、本当によかった
放っておいたらそのうち
元気になるのかもしれない
本来ならば、猫にはそういう力があるものだ
毎日薬を飲ませる前に、迷う
薬をあげたら反対に
持っている力が弱くなってしまうかもしれない
でも、元気がないから
できることはしてあげなきゃいけない
猫も、かしこい
私がただ、なでようとするのではなくて
薬を飲ませようとすると
するっと逃げてゆく
きっとこちらも身構えているのだろう
今日はどれぐらいひっかかれるんだろうな、とか
嫌がるのにかわいそうだな、とか
ろくに食べてないのに薬ばっかりじゃ嫌だよな、とか
そういうことを思っていると
分かってしまうのだ
今は3種類の薬がある
全部あげ終える頃には
猫も私もぐったりして
私はソファで、猫は床で
それぞれの所定の位置にもどり
お互いの顔を見ながら
寄って往こうか、ここにいようか
しばらくお互いに様子をうかがう
それから、猫は洗濯機の中に入って
気に入りの靴下を取ろうとしたりしている
チリチリと首輪の鈴をならしながら
うろうろする
私も鈴の音をどこかで気にしながら
パソコンに向かったりする
病院通いと薬の苦労話を
たっぷり周囲の人に話しながら
こういう話というのは
云い始めると止まらないことを、知る
由々しき事態
このままでは、愚痴ばあばになってしまうのでは、と
心配になる
猫もいい気がしないだろうからぐだぐだ云わないようにしなくては
もしくは、
おしゃれで面白い云い方を研究しなくては、と
思ったりする
それから、薬をあげるときに
知らず、猫に話しかけていることに気づく
いよいよ猫に向けた
独り言がはじまってしまった
もともとお話をする猫なので
そのうち私にしゃべり方が似てきたらどうしよう
心配事が、またひとつ、増えてしまった
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