2012/11/17

そして、無能の人になる



例えば、宮沢賢治の話や詩の中には
たくさんの鉱物や地層が出てくる

黒い露岩、泥炭層
花崗班糲、血紅瑪瑙、
蛇紋の諸岩、巨礫層

その文字が、冷たさや色や硬さや湿り気を持って
文中に浮き上がる瞬間がある

今また、宮沢賢治の詩集などを手に取ると
鉱物図鑑を日本に忘れて来たことを
後悔する

もし、彼がこの石たちを見たら
どうやって、表現に使うのだろう
拾ってきてしまった
名前もよくわからない、石たち

草も生えないような土地には
金属のような硬さと、鋭い音を持った石
陶片に鉄釉をかけたような色だ
時折、姿を現す、周りの景色の厳しさと無縁のまるい石

ただの無機質な、火星の表面のような石の質感なのに
割ってみたら、青い色が走っていたりする

手のひらに乗る大きさの石は
転がっている時には、何でもないものなのに
手に取ってしまうと、その瞬間に
感触とともに、突然意味を持ち出す

石を拾うくせがある

そして、撫でて、見て、握ると
つい、ポケットやバックの中に入れてしまう

そういうものたちが、最近、ふえている

ひなたぼっこの場所を取られた、と
ラファがいじったりしている

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