ヨルダンで一番好きな土地はどこか、と聞かれたら
ここだ、とすぐ答える
去年のちょうど今頃
同じ土地に来た
その時は、ヨルダンで初めて、目の前に広がる
溢れる緑に、胸がいっぱいになった
私は緑と湿気に飢えていて
それは、あたたかく、湿気ばかりの国への懐かしさのせいもあって
しばらく、身体いっぱい、空気を味わっていた
الحمهとしか、バスには書かれていないヤルムーク渓谷の端
往くのに、3カ所のチェックポイントを通過しなければいけない
ゴラン高原のイスラエルと、ヨルダンの狭間だ
去年はまだ、秋の高く青い空の下にあった
そこだけが艶やかな緑に覆われていた
今年は、今季最初の雨雲が立ちこめていて
初冬を思わせる空だった
ゴラン高原は黄色く枯れた草で覆われている
それでも、その麓の小さな小さな町だけが
トウモロコシやヤシやブーゲンビリアの真っ赤な花に
色が踊るようだった
少し手前にはイスラエルのシナゴークが見える
いつかの温泉保養地
結局今年も、温泉には入れなくて
渓谷の川を眺め
草むらのロバを見て
ゴラン高原を眺めながらピクニックをするヨルダン人を見て
それから、私もゴラン高原を見上げる
厳しい岩肌とその土地を隔てる
小さな川
どことなく、育った街の端を流れる川の景色と重ねる
水と緑がある
だから、桃源郷だなんて、思うのだ
たったそれだけの理由だと、分かっている
でも、それがとてつもなく私には大事なものなのだ、と
認識するために、来たのだと、知る
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