仕事が早く終わったので
少しだけ、遠出をする
イラク・アル・アミールという
2世紀頃の遺跡を目指す
ただ、本当の目的は遺跡ではない
今の時季にしか見られない花を
見ておこうと思い立った
野生で咲くアイリスの様子が見たかった
ワディ・シールという土地からさらに
バスを乗り継ぐ
バスはずっと、緩い渓谷の沢から一定の距離を保って
起伏の大きな山並みの斜面に沿った道を往く
遺跡は、山並みの遥か遠く先まで見渡せる
広く小高い土地に、ぽつん、とあった
ヨルダン人の家族などが
車でピクニックに来ている
やぎが草を食み
産まれたばかりの子やぎが跳ねる
遺跡の敷地にはアイリスは咲いていない
そこから少し坂を登った
岩肌の見える斜面に
たくさんの小さな花々と一緒に
アイリスも咲いていた
ヨルダンの国花が、ブラックアイリス
ジャーマンアイリスの一種なのだと思う
形は同じだが、他のジャーマンアイリスのように
黄色い筋や、色の濃淡はない
濃い黒紫色の
他の花々のような華やかな春の色とは異なる
強いぐらいの色の濃さが
遠目からでも目立つ
ただ、よく足元を見ると
タイムやらラベンダーやらウイキョウやら
ハーブ、と呼ばれているものが
いたるところに生えている
それから、野生のアネモネ、アザミ
静かな土地だから
色々な種類の鳥の鳴き声と
ミツバチの羽音だけが響く