2012/02/02

人と海と砂漠についてのいくつかを読む

日本からヨルダンへの飛行機は長かった
乗り継ぎも含めて丸24時間
日を挟んで2日がかりの移動


機内持ち込みの荷物の中に
重たくなるような本の類いは全て入れていたから
本については選び放題だった


でも、結局いつか読んだ本を、手に取ってしまう


まず、「遠い水平線」
アントニオ・タブッキの中編小説
もう何度目か、分からないほど読んだけれど
また、何だか楽しんでしまうのだから
いつもいい加減にしか、読んでいないのかもしれない


身元不明の死体の正体を探る、という
一見物騒なストーリーが
イタリアの港町の子細な描写や
ごく、身近で、人間的な視点と
でもいくらか幻想的な展開とで
描きあげられていて
すっかり満足する


次に「星の王子様」の池澤夏樹翻訳のものを手に取る
読み慣れた訳との違いが
会話の流れや、主人公の語りの書き口に現れていて
より、話しかけられているような
距離感の近い感じが、気に入った


考えてみたら
池澤夏樹の父親である
福永武彦もフランス文学者だったし
本人もフランスに住んでいたのだから
言葉の選び方や、フランスの思想や哲学
原本への読み込みにも
思い入れがあるのであろうことが
よく感じられた


サンテグジュペリは飛行家だった


空からの視点について
ぼんやりと思い
真っ暗な空のはしっこが
アブダビに近づくにつれて
赤く染まっていくのを眺めた


アブダビからの乗り換えの間に
手荷物の中身を少し入れ替えて
「海の仙人」を読む


表紙の貝殻がずっと気になっていた
好きでよく陶土で作った貝の形に似ていたからだった


話はどうしようもなく、悲しかった
中編で、それほど長い話ではないのに
意表をついた登場人物と
するすると知らぬ間に進んでゆく話の流れに
量感があって
あっという間に
どうにも、しようがない方向に往ってしまって
気がついたら、話は終わっていた


北陸から東北にかけての
海に面した街の様子がきれいだった
主人公が住んでいる敦賀の海に
そういえば随分昔
家族で海水浴に往ったのを思い出す




知らぬ間に飛行機は
いつの間にか見慣れてしまった
白茶けて起伏だらけの山々の上を飛んでいて
さっきまで見えたはずの海は
どこか遠くに往ってしまった


なに、アンマンは星の王子様が居たような砂漠ではない
水気もそれほどないけれど
ひとりぼっちでヘビに噛まれて
死んでゆくわけでもないのだ


でも、星がたくさん笑っているのも
見てみたい
この国に居るうちに
たっぷり星の輝く砂漠へも、でかけてみよう











0 件のコメント: