2012/02/29

記憶から引っぱりだす


わけあって
バックコーラスを唄えるようにしておいてほしい
そういわれて
youtubeが添付されたメールをもらう

Oh Happy Day

随分と複雑な感じのコーラスで
難しくて全てのパートはさらえなさそうだ

主旋律もアレンジがひどくて
もともとがどんなメロディだったか
初めてこの映像を見た人は分からないだろう

一人きりで唄っているものを
以前よく、聴いていた気がする
誰だったか、気になり始める
検索をかける

しばらくして発見する
Joan Baezの唄ったものだった
きれいな声だった
よく澄んで、少し震える声

腑に落ちて、気持ちが落ち着く

2012/02/25

ことり

最近、朝から小鳥たちがにぎやかだ
スズメに似た、小さな鳥
水道管や配水管の脇や上で休んでいるのが
家の窓から見える


気を引きたい
が、うまくも往かず
撒いたとうもろこしもひからびる


窓を開けて写真を撮る


先週の今日は雪で仕事を休んでいた


今日はすっかり春めいて
日差しも暖かい


身体を毬のように膨らませていた小鳥たちも
今日はいくぶんすっきりした身体で
ちょこちょこ、と
跳ねたり、飛んだり、鳴いたりしている

2012/02/19

雪の日


朝起きたら、窓の外が真っ白だった
それ自体は、よくあることだ
標高が高いから
雲の中に入ってしまう朝も少なくない


ただ、布団からいくらも身体を出したくないほど寒かった
やっと這い出て外を見れば
うっすらと雪が積もって
屋根やら木やら、車やらが雲と同じ色になっていた


困ったことに雪は2日続いている
交通機関の問題やら仕事場の事情で
都合3日間の休みになってしまった


高台の建物の5階にある私の部屋は
随分と空と近くて
雲の向こう側の太陽が少し顔を出したりすると
部屋中が真っ白になる
雲か、霧か、正体のわからないものが
視界を覆う


そうか、反対に
窓際はいつもより明るくなるのだ


やりかけだった仕事や
気ままな絵を描くにはちょうどいい


ぼんやりと建物の輪郭だけを残した
白い世界を見ながら
久しぶりに机に向かって
一日を過ごすことになる


外は静かだ
随分と音楽が
耳の近くで親密に響く


確かに寒いけれども、悪くない

2012/02/02

人と海と砂漠についてのいくつかを読む

日本からヨルダンへの飛行機は長かった
乗り継ぎも含めて丸24時間
日を挟んで2日がかりの移動


機内持ち込みの荷物の中に
重たくなるような本の類いは全て入れていたから
本については選び放題だった


でも、結局いつか読んだ本を、手に取ってしまう


まず、「遠い水平線」
アントニオ・タブッキの中編小説
もう何度目か、分からないほど読んだけれど
また、何だか楽しんでしまうのだから
いつもいい加減にしか、読んでいないのかもしれない


身元不明の死体の正体を探る、という
一見物騒なストーリーが
イタリアの港町の子細な描写や
ごく、身近で、人間的な視点と
でもいくらか幻想的な展開とで
描きあげられていて
すっかり満足する


次に「星の王子様」の池澤夏樹翻訳のものを手に取る
読み慣れた訳との違いが
会話の流れや、主人公の語りの書き口に現れていて
より、話しかけられているような
距離感の近い感じが、気に入った


考えてみたら
池澤夏樹の父親である
福永武彦もフランス文学者だったし
本人もフランスに住んでいたのだから
言葉の選び方や、フランスの思想や哲学
原本への読み込みにも
思い入れがあるのであろうことが
よく感じられた


サンテグジュペリは飛行家だった


空からの視点について
ぼんやりと思い
真っ暗な空のはしっこが
アブダビに近づくにつれて
赤く染まっていくのを眺めた


アブダビからの乗り換えの間に
手荷物の中身を少し入れ替えて
「海の仙人」を読む


表紙の貝殻がずっと気になっていた
好きでよく陶土で作った貝の形に似ていたからだった


話はどうしようもなく、悲しかった
中編で、それほど長い話ではないのに
意表をついた登場人物と
するすると知らぬ間に進んでゆく話の流れに
量感があって
あっという間に
どうにも、しようがない方向に往ってしまって
気がついたら、話は終わっていた


北陸から東北にかけての
海に面した街の様子がきれいだった
主人公が住んでいる敦賀の海に
そういえば随分昔
家族で海水浴に往ったのを思い出す




知らぬ間に飛行機は
いつの間にか見慣れてしまった
白茶けて起伏だらけの山々の上を飛んでいて
さっきまで見えたはずの海は
どこか遠くに往ってしまった


なに、アンマンは星の王子様が居たような砂漠ではない
水気もそれほどないけれど
ひとりぼっちでヘビに噛まれて
死んでゆくわけでもないのだ


でも、星がたくさん笑っているのも
見てみたい
この国に居るうちに
たっぷり星の輝く砂漠へも、でかけてみよう