2011/08/28

في الكرك




休みの間に大してどこにも出かけず
部屋でぼんやりしていた
少しぐらいは出かけてみようと
南部、カラクへ向かう

カラク城へ往く
カラク城は十字軍の時代から遺る遺跡で
丘の上に建つ
圧倒的に石の文化だ
石の堅牢さを思い知る


海抜1000メートル
城の高い石垣の塀からは死海が見下ろせる
塀の石の中には化石が埋まっているものもあった


あまり意識はしていなかった
でも、どうも常に高いところで暮らしているようだ
アンマンで海抜773メートル
今住んでいるところはアンマンでも一番標高が高い

そういえば、往き道は砂漠か土漠が広がっていたけれど
すべてが随分と高いところにあったようだ

日本で一番海抜の高いところにある市役所は川上村
海抜1185メートル
きっとすっかり涼しいところで
避暑にでも出かけるところだろう
おそらく緑も深い

不思議な気持ちになる

私は、高いところに暮らしている
見下ろすもののない、高いところ

往く道のすべてが坂なのは
仕方のないことだ


帰り道
アンマンの街並の灯りが
遠い蛍のようにひろがる
だって山だらけなのだから



2011/08/19

بحب حمار


せっかくペトラ遺跡に往ったのに
そこらへんをうろうろしている
ロバとラクダに気を取られる

大きな耳、少しうつむきぎみな顔
細い足、苗のようなたてがみ

確かに暑かったし、岩だらけの小山に登って疲れていた
でも、歩けないことは、なかったのだけど

随分割高と分かっていたが、ロバに乗る

よいしょよいしょと坂道を
時々疲れたと立ち止まっては
飼い主の男に叩かれ
またのっそりと歩き出す

こちらの人はなぜだかと
とてもよく、家畜を叩く
ロバなど、たたいてちょうどだ
とばかりに、叩く

ロバはすぐひるむ
だからきっと、馬鹿の代名詞に使われてしまう

少し卑屈な悲しい眼で
叩かれた後ろ足を見遣ったり
叩かれた首をよじったりしながら
頭を縦に振ってもう一度、歩き出す

こちらが、楽しいのか悲しいのかわからない

目的地までついて
ロバからおりて
ロバの鼻筋や額をなでる
あまり表情が変わっていないような気がしてくる


きっと足下の砂利や階段に足を痛めないように
地面と往き道に神経を集中させて
どうしたら叱られてしまうのか
どうしたら叱られないのか
時々思い出しながら
歩くのだ

彼らにとっては
荷物が乗ろうが人が乗ろうが
関係ない

そんな彼らの変わらない顔つきに
でも、どこかで安心する

2011/08/15

地図と鳥






マダバへ往く

モザイク画が有名な土地ということで
何か使えそうなものでもないか
探索しに往く

5つの教会や施設に
モザイクが集まっていた
原始キリスト教や、その前の時代のものもの

地図のモザイクがあった
その時代の死海やその周辺
地名がモザイクの文字で絵に組み込まれている

地図をモザイクで残そうと思う、など
どうして思ったのだろう


そして、違う教会では
無数の鳥を見る
羽の柄まで小さなピースを使って表された
いろいろな鳥たち

どうしてこんなに鳥が
モザイクのモチーフになったのだろう


石でできたかけらの色は褪せないけれど
砂をかぶって白っぽくなったモザイクは
どこか、執拗な執着心を思わせる

モザイクの職人だったならば
地味で淡々と仕事をするのだろう


大きなモザイク画は
こちらの絨毯を思い出させる

仕事の細かさは
パレスティナ刺繍を思わせる

どちらが先かは知らないけれど
私は、そういう仕事ぶりが好きだ


2011/08/10

アンマンでも、同じように




9月から始まる活動まで
今は何もすることがなくて
正直少し、困っている

時間があればしたいことは
結局どこにいても同じよう
ベトナムでも隙あらば
学校の音楽室に往っていたように


音楽に詳しい方から教えていただいて
ピアノの練習所、というところへ
往ってみる


西洋のオケとアラブ音楽のオケを持つ
音楽センターのようなところだった

ラマダン中なので人もまばらで
楽器の音は木琴の他、静かな館内だった


噂では無料で貸してくれる、という話だったけれど
どうも1時間5JDもかかるらしい
5JDは750円ぐらいだから
なかなか気軽には借りられない

そんなのよくないって、思うの
と受付の女の人は云う
日頃から使おうと思うと
1もしくは2JDが限界です
そう云うと
2JDを手渡して
これで練習してください、と云う
驚いてしまった

丁重に断り
責任者の女性のところへお金を払いに往く


正直、お金を取るにはメンテナンスがなさすぎて
鍵盤の重さも音も、あまりよくはなかった

でも、久しぶりに弾いて
少し気分が晴れる
古いKAWAIのピアノだった

素敵な人に会えたし
まあ5JDでも仕方ないかな、と腹をくくる


こちらの楽器も一つ買った
タール、と云う名前の打楽器だ

満月みたいな形が好きなだけで買ってしまう

低くて、皮の張りはいまいちだけど
いろいろな音が出て面白い


アラブ的はリズム感は全くないけれど
動画を見ながら練習してみようと、思う


2011/08/05

新居へ遷る




語学の研修が終わり
引っ越しをする

アンマン市内の北西
スウェーレ、という地域

アンマン市内で一番寒くて
雪の降る場所

昨日の夜は長袖を着ても、寒かった

無駄に広くて
3つのベッドルームと
リビング
謎のだだっ広い空間
そしてキッチン
バスルームも2つ

入った時は廃墟のようで
これはどうしたものかな、と
しばらく途方に暮れてしまった



こちらの住宅はほとんどが
石でできている
だから冬はとんでもなく寒いので
カーペットを敷いている

でも、どうも私には
そのカーペットが虫たちの寝床のようで
恐ろしくて置いておけない

丘の上なので風も強くて
部屋中が砂っぽい


バケツとフロア用洗剤を買って
今までやりたくてできなかったことを
久しぶりにしてみた


床に水を撒いて
スクレーパーで汚れを取ってゆく
べトナムではよくそうやって掃除をしていた
でも私の部屋には排水溝がなくて
やりたくてもできなかった

大学では粘土で汚れた部屋を
よくそうやって掃除した
いやがる人も多かったけれど
どうも、私は気に入っていた

久しぶりの水かき

水不足の夏に不謹慎だけど
水の豊かな国からきてしまったのだから
仕方がない

楽しくてどんどん水を撒く

きれいさっぱりすべての部屋を
水で、水に流してしまった


ほんの少しの洗剤のにおいが気持ちいい

なぜか3つもあるベッドのマットレスも
大家さんにお願いをして
屋上に干した

やっと、今日は、眠れそうだ

2011/08/01

ラマダンが始まる



ラマダンが始まる

朝、どうも車が少ない
語学学校へ往きたいのにタクシーがつかまらない
とても静かな朝だった

語学学校へ往く
明日で語学学校も最後なのに
先生がいらっしゃらない
いつも居るはずの子供たちも居ない
そして、チャイムが鳴る

先生はいらしたが
鍵を探し、部屋を開けるまで
5分ぐらい何も、話さなかった
省エネ対策だ


11時からはいつもの子供たちが来る
でも、子供たちもほとんどがムスリムだから
朝からすっかり疲れている
大変なの、疲れてる、とのこと

大使館からはラマダンに向けての注意文書が送られてくる
ラマダン中、特に2時3時の車が混む時間帯には
運転が荒くなるので
注意すること、とのこと
日没前は特にイライラしているらしい

タクシーに乗っているときに事故に遭っても
被害を少なくできるような体勢で乗るように、とのこと
いったいどんな体勢ならいいのだろう

確かに帰りのタクシーの運転は
ジェットコースターのようだった

食べ物屋はことごとく閉まっている
仕方なく、部屋に帰り、アパートで食事を作る


でも、ムスリムは口を揃えて云うのだ
ラマダンはすばらしい、と


ラマダンの夜は長い
日没後に食事を食べ
その後、外へくり出すようだ
夜中まで店は開いているようだ
3時過ぎにもう一度食べて
早朝、日が昇る前にモスクへ往き
それから、寝る

ラマダン中だけ食べられるお菓子もあるようだ
昼間が禁欲的な分
めくるめく夜が待っているのかもしれない

一体どんな夜になるのか
少しだけ、楽しみだ