なんだかたくさん読んでいたようなので
長過ぎるから、続きの、紹介。
全く関係なけれど
満月の前後は両日ともほぼ、まんまるなのに
2日経つと、一気に萎んでしまうように見えるのは
気のせいなのかしら。
久しぶりに、池澤夏樹の読んでいない本を、読む。
新刊ではないのだけれど、日本で買ってしばらく、
これもまた、大切にしすぎて本棚から出していなかった。
震災をテーマにした本は、おそらく本人の徹底した被災地での視点が
元になっている。
それでもなお、ファンタジーに留まって話を書き上げているところに
底知れない本の力を思い知らされる。
双頭の船
一章ごとに出てくる、人物とその人が連れてくるものや考え方が
根底で作者の世界観や思想と混じり合い、波打ちながら
最後まで変化し続けていく話の展開に、
確実な希望を宿していく。
亡くなった人々と、亡くした人を思いながら生き続けていかなくてはならない
残された人々の思いが
物語の中にたっぷりと、でもそこはかとない明るさを持って
描かれていた。
けっして、性善説だけを説いているわけではないのだろうけれど
池澤夏樹の本は、混沌の末に、
人を肯定的に描いているように、思う。
それぞれの心の中の形になりにくい善や
暴力とも取れる正義というのは
やはり、状況を変えていくのには
必要なものなのだ、と思ったりした。
正義や善とその反対にあるものを見せつけてくる。
これは読み出すと朝までコースとなるので
読み出す時間が問題になる。
週末は気にしなくてもいいので、
これ幸いと読み始める。
とりあえず、この2週間ほどで、3回読んだ。
相変わらず文字が多いな、
あれ、トルメキアのぷっくり王子たちはいつから出てくるのだっけ、
腐海の図は裏表紙になかったっけ、
これもヒドラだったんだ
などなど毎回新しく疑問や記憶違いや発見があるから
あまりきちんと読んでいなかったのかもしれない。
それでも、世界というものの成り立ちや戦争の形が、
これほど分かりやすく描かれているものはない。
青い衣を纏った神はやってこない現実の世界では、
本質的にナウシカのような心を持ち続けることはできなくて
ただ彼女が最後に神と立ち向かう時に云い切った
人間の存在のしかたに、ただただ感心することになる。
久しぶりに、夏目漱石の倫敦塔も、読む。
ふとした会話の中から出てきた漱石の話で
おすすめを訊かれて、すぐに、倫敦塔、と答えてみたものの
そう云えば詳細がよく思い出せなくて
青空文庫で検索をかけて
深夜にまた、読み直していた。
意味をなさない描写を伴う言葉が一つもなくて、
一語一語が言葉以上の存在感を持っている文章の高潔さに
当たり前だけれど、文豪の所以を知り
舌を巻く。
神経衰弱と胃炎に悩まされていたはずなのだけれど
だからこそ、一字一句に心血を注ぎ続けたその情熱を
深く、体感する。
どんな話でもそうなのだけれど、
気に入ったものや好きなものの話をする時の
人の話はおもしろい。
漱石の倫敦塔への思い入れが、よくよく伝わってきて
でも、漱石らしく、最後にはきちんと
その熱の行き過ぎの恥じらいのような追記が、
一緒に書かれている。
胃潰瘍の理由は、たぶんそのあたりに、ある。
初めてのオルハン・パムクが、
現在のところ一番の楽しみだ。
わたしの名は赤
やっと下巻が手に入って、心置きなく先が読めるようになった。
全く、下巻を買わずに日本を出るなんて
失態としか、云いようがない。
前回帰国した時から4ヶ月ほど、悶々としていた。
細密画の絵師とその編纂者たちの話なのだけれど
各章が、異なる登場人物による視点から書かれていて
設定と書き方だけでも、かなり凝っている。
さらに、恋心と殺人と絵画の歴史と細密画の極意が
織り交ぜられていて
それぞれの視点から書かれている各章を
それこそ細密画を鑑賞する時の視線の動かし方のように
一つ一つ、仔細に追っていくことを読み手に迫まってくる。
きっと最後には、
その絵の全体像を見ることができるのだろう。
大切に、読まなくては。
未読の本が
秋を待たずしてほとんど、無くなってしまうから。
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