おかしな土地だ、と思う
少し雨が降れば
今からまだ寒くなるというのに
緑の下草がいっせいに、伸び始める
それが、11月
その後何度か雪が降って
冷たい風が幾日も止まなくて
一体どうしてこんなに
極端な気候なんだろう、と
ストーブを抱えるようにして座り込んだまま
ずっと、耐え忍ぶように
窓の外を眺めていた
それなのに、気がついたら
アーモンドの花が満開になっていた
緩やかな、切れ目ない丘陵の
緑の野原と冬を越えたオリーブの葉の
日本とは違う、でもどんな土地でも美しい
あらゆる緑の色相のなかに
まるで桜のような、その木々が
ほわほわと、浮かぶ
死海の近くと、ヨルダンバレーへ往く
死海に近い土地は標高が低い
海抜がマイナスになってしまうような土地だから
アンマンよりも随分、暖かい
ヨルダンバレーもいつになく
緑が濃くて、鮮やかだ
ミツバチの羽音が
耳元で、遠くで幾重にも重なりながら
絶え間なく響く
ルッコラのいくらかくすんだ白い花
フェンネルのふわふわと柔らかな葉のかたまり
菜の花に似た黄色い花
日の光を透かして
濃すぎるようなアネモネや芥子の赤
その他の名前の分からない
たくさんの緑と、たくさんの青や黄色や白やピンクが
目の前に広がる
たぶん、浮かれていいのだろう
でも、うまくこの
春を感じている自分の気持ちを
言葉も声も指先も髪の毛も
どう表したらいいのかわからなくて
戸惑っていた
結局、ただ、静かに鑑賞する
こちらの季節の移ろいのように
はっきりと分かりやすいこの土地の人々は
草木や花畑の中で
バーベキューをしたり、寝転がったり
アルギーレを吸ったり、駈けたり、する
明るい声が響き渡り
羊やヤギの群の
鈴の音と重なって
遠くのお祭りのようだった
0 件のコメント:
コメントを投稿