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預かりものの猫が居る
アラブで産まれてアラブで育つ
生粋のアラブっ子の猫
ラファ、という名前
ベトナムでやむを得ず拾ってしまって
しばらく飼っていた猫には
ブーレ、という
早いテンポの二拍子の舞曲の名前をつけた
今は、お世話になったホーチミンのおばちゃんの家に居る
飼い主は、この猫に
ラファ、と名前をつけている
ドレミファ、のファ
ソラシドのラ
こちらの猫は、ペルシャ猫のような血統が強いようで
ラファもまた、冬毛に変わり
もふもふし始めた
上の写真は先月の様子
下の写真に比べて随分とスリムだ
本人はまだ、冬毛に慣れていないようで
冬には室内を極寒にする石のタイルの上で
よく横になっている
当初の予定では、来月末には元の飼い主に戻るはずだった
けれども、結局
今回もまた、引き取りに来れない、との連絡を受ける
何にも知らないで
相変わらず膝の上で寝ている
困ったな、と
私は途方に暮れる
それから、何ともかわいそうだ、と
いろいろな猫を育てたり世話をしたりしてきたけれど
ラファはその中でも一番
分かりやすい性格だ
そして、賢い
ダメだと分かっている部屋に入れば
私の姿を見た瞬間に、逃げ出していく
いたずらをしていると
しかる前にかわいく鳴いて、知らぬ顔をする
おなかがすいた朝には
私の顔を軽くパンチする
夢中になって大好きな糸や紐で遊んでいる時には
人の姿など、目もくれない
しばらく放っておいたら
寂しくて寄ってくる
気持ちがいいとすぐ
ぐるぐる云ってしまう
でも、抱かれるのは大嫌いだ
自分の往きたい時にしか
お前の元になんか往ってやらないぞ、とばかりに
きっと自分が猫だなんて思っていないのだろう
ラファは、どうしても指をしゃぶる癖を直せない
一日に一回は、たっぷり私の小指をしゃぶっている
どこかへ出かけていても
何となく気になってしまう
今頃少し寂しがっているんだろうな、と
そして、なんとなくラファを見ながら
結局何にもしないで一日が終わってしまったりする
つまるところ
ラファは、随分とかわいいやつで
私はラファのことが、随分好きなようだ
困ったな
夏休みの間にこちらに旅行へいらした方に
本をお願いした
「春を恨んだりはしない」 池澤夏樹
手に取るまでに時間がかかった
夏休みのだらだらとはほど遠いことは分かっていたから
いくらかの覚悟が必要だった
夏休みのおしまいに
最後の宿題のように、読んだ
震災に関する話で
池澤夏樹自身が被災地を訪れたルポから
本人が見て感じたこと
天災にまつわる考え方
これからのこと、などが
写真と一緒に収められている
私自身が震災の時日本に居なかったこと
そして、日本へ戻ってもわずかな滞在の後
すぐにヨルダンに来てしまったことが
いつもどこかでひっかかっている
読み終えた後しばらくして
「Pray for Japan」という映画も見た
震災とその後の復興への道のりを
アメリカ人の監督が、静かな丁寧な視点で
描いたものだ
読んだからといって、見たからといって
何ができるわけでもない
でも、知ること、考えることを
必要としている
本の題名となっている
ヴィスワヴァ・シンボルスカという詩人の詩
題名の通り、どんな惨いことがあっても
いつも豊かな恵みを抱いてやってくる
それは自然がもたらしたこと
春も同じ 震災も同じ
こちらはそろそろ秋の気配で
オリーブの実が膨らんで
果物の種類が一番豊富になる
順々に季節はきちんとやってきて
時間もたんたんと過ぎている
新学期が始まる前
追試で学校へ来なくてはならない子ども達が居る中
廊下で本を読んでいた
何が書いてあるの?そう訊くので
写真を見せて
日本であった地震の話だよ、と云う
被災地のあの、瓦礫の山ではなくて
静かな街の断片が映されている
こちらにはほとんど地震がないので
子ども達はよく分からないような表情で
写真を見ていた
学校の校庭の写真が入っていたので
それを見せてみた
ブランコがある、広い校庭
きっと震災の時にはたくさんの人たちが
こんな場所で仮住まいを余儀なくされただろう
広いねぇ
子ども達は目を見開いてうれしそうな顔をする
こちらの校庭はコンクリートばかりの
狭い広場でしかないから
うらやましいのだ
次の春が来るまでに何ができるのか
こちらでどんなことができるのか
結局のところ自分のことしか考えられない
とりあえず、子どもの顔を
よくよく見つめていこう、と思う