Donna di Porto Pim
題名だけでも、もう十分なぐらいのこの本を
4、5年前に読んで、もう一度読みたいと思った時には
どこかへ往ってしまって
どうしても見つからなかった
アントニオ・タブッキの作品を須賀敦子が翻訳している
言葉が、水面の煌めきのように、どこまでも繊細で
美しい作品だ
序文にあたるタブッキ自身の作品に関する解説が興味深かった
この本を書くにあたって
アソーレスの島々で過ごした日々を
どのように小説の中に織り込んでいったのかが、書かれている
どこかの土地、クジラ、捕鯨のような
いくつかの鍵になるものを
どのようにして一つの本に作り上げてゆくのか、という
過程や規律、のようなものを感じた
クジラの生体、アソーレスを訪れる男女
捕鯨の歴史、捕鯨に携わる人々
ある捕鯨手の人生
それから、クジラの目から見た人間
確かに、断片なのだけど
そのかけらのようなものが
でも、最後に一つの絵になることはなくて
すきまがたくさんあって
すきまに漂う空気が、そのままかけらの上を覆っている