この国の言葉がさっぱり話せない
最低限でどうにかしようと思っている
そして、無理矢理どうにかしてきたような気がする
多くの事は、その、最低限の語彙と英語で
今まで何とかなった
と云っても
何かを伝えたい、という意思は
日常会話のような高等次元ではなく
例えば買い物のときのように
互いの目的がはっきりしているような場面での話
よく、この国で旅行者は服をオーダーメイドする
してはみるが、旅行者と同じような
価格と店構えではもたないので
ローカルなお店へお願いをしてきた
初めから、そこまで信用できる店ではない
そう、聞いていたが
何度かお願いをするうちに
だんだんと出来上がりの期限が守れないようになってきてしまう
住んでいるところから
バスやタクシー、もしくは徒歩で
軽く1時間以上をかけて往くのだけれど
何だか申し訳なさそうな顔の店員が
ショウウィンドウの向こうに見える回数も増えてきた
ないから、来週にして
今日できるって、云ったでしょ
ないの。(たぶんお針子さんが)風邪で寝込んでいるのよ
分かったよ、じゃあ来週ね、絶対よ
などと云う会話を
2週続けて繰り返した。
さすがに、3回目はないだろう
そう思って店の前に立つと
やはり、申し訳なさそうな顔の店員がこちらを見ながら立ち上がる
むむっと、怒りも湧いてくるが
この人に云ってもしょうがない
怒ってもそれはそれで、申し訳ない
今度は、どんな云い訳なのだろう
そう云う思考へと、転換してみる
お金と時間を費やしてやってきたのだから
ただでかえってやるものか、と
出来上がりの確約を取り付け、さらに少し、意味もなく粘ってみた
ことばがほとんど分からないもの同士
何とか互いの思いを伝えたいが
私も意志が弱く
相手は調子がいい
しばらくの沈黙の末に
3人いた店員のうち
店長らしき女の人が片言の英語で云った
お父さん ベトナム人
お母さん 日本人
にこにこしながら、そう云うのだ
そんな訳がない
と、つっこむ気も失せる
こちらも笑いながら、そうなの、と答える
結局笑ってしまった
決して失笑にさせないところが
何とも云いがたいけれど
すごい技だと思う
そして私は来週も、その店へ往く