自分で製本などをしていて、なかなか本が読めずにいました。
お借りしていた本で、短編なので少しづつ読み進めていったものが
最近やっと読み終わりましたので、紹介を。
「サハリン・ニブフ物語」
サハリン出身のV・サンギという作家の書いた作品です。
サハリンの土地で昔ながら生活をする人々の
自然との対峙、それをさまざまな形で克服、共存しようとする人物の姿、
近代化の波による生活の変化と苦しみ、救いなどを
すばらしい翻訳で読むことができます。
その土地に住む人々が長らくしてきている熊や魚、アザラシの狩の様子や
自然の摂理に合わせた生活習慣を、文章中に散りばめています。
詳細で、でも簡潔で、その恐ろしく適度な言葉の使い方に感動しました。
「草木が旺盛な成長を停止し、大地にその富を遺してゆっくりと疲れを休めるとき、鮭鱒族の長兄である鮭の大群がひしめき合って遡上してくる。人間は魚群をもとめて、新しい漁場へすばやく移動する。」
不必要な描写はないのですが、どこかつんとした冷たさのうちに、
余分なものが淘汰されて残されたものを
選んでいる、もしくは必然的に、それしかないのかもしれませんが
言葉にしているような気がしました。
こういう感覚は自分で身に着けようと思っても、
おそらく、とても難しい。
よく、絵を描く人が、原風景としてみたものの色彩感覚に支配される、と聴きますが
文章も同じなのではないか、そう、と思います。
どうも、私はまだまだ余分であまりにも細かくて、どれだけも俯瞰できていないようです。