つくばは田んぼが多い。
小さな森と森の間を縫うようにして広がる田んぼには
つんと伸びた稲の葉が光っています。
その景色を見るたびに
ああ、往きたいな、と思うところの話。
去年の夏、レジダンスに参加していました。
ちょうど今頃から、三重県の伊賀市の旧青山町
種生、老川地区というところに1ヶ月半近く滞在しました。
彫刻を制作して、その地域に残す、というのが直接の活動でしたが、
地域の人たちと交流しながら、その刺激を作品に反映させる、という趣旨も含んでいました。
おじいちゃんおばあちゃんの多いところで
とにかく山深いところだったから
山の緑や田んぼの緑が、きれいでした。
ちょうど今、前回のブログで紹介した組みひもを教えていただいたのも、この時期で
83歳のおばあさんから教えていただきました。
糸を支給されて編むだけ。
絹糸なので販売されるときには高くなりますが
編むだけならば、1本数百円にしかならない仕事を、
地道に何十年と内職として長らくやっていらした方でした。
レジデンスが終わって、いろんな思いを胸につくばへ戻ってきて
時折組み紐を作りながら、ぼんやりと夏のことを思い出していました。
制作よりも、お会いした人の思い出のほうが強くて
ものすごく、どうにもお返しができないほどお世話になった方がたくさんいて
どうしたら少しでもお返しができるか、ずっと考えていました。
組み紐は本来、帯締めとして作られているものです。
着物の需要が減った今では
スタラップやキーホルダーの先につけられる物も出ています。
伊賀にある、組み紐に関する郷土施設にも置いてありましたが、
やはり、帯締めのほかの加工品は、ストラップ、ネクタイなどでした。
ちょうどそのころ、益子の方に、組み紐を使ってアクセサリーを作っている作家さんの作品を見ました。
組み紐もこうやって見せると、紐本来の美しさが前面に出せるのだな、と思い
自分でも真似をしてみたのが、組み紐ネックレスの始まりです。
だから、技術も発想もまねっこなのです。
でも、まず作ったものを一番初めに、
お世話になった地域の方に、贈りました。
組み紐を使って作ったものを売る、というのは
今でもどこか、後ろめたい思いがあります。
ただ、もし作ったものに関心があって、見てくださる方がたくさんいらしたら、
種生、老川で教えてもらったのだ、と宣伝をして、
組み紐の美しさを知っていただけるかも知れない、そう思っています。
また、作りためた組み紐をネックレスにできたら
種生、老川に往きたいと思います。