2009/08/13

ピアノの音について

いつも使うバス停のすぐ近くに
古本屋がある
洋書がほとんどなのだけど
少しだけ日本の本があって
バスを待つ少しの時間に本を見たりする
日本でもよくしたことなのだけど
この土地でそれができることはちょっとした楽しみになっている

表紙だけを見て洋書だと思っていたが
綴じが反対なので開いてみたら、クレストのシリーズだった

「The piano shop on the left bank」
パリに住むアメリカ人がピアノの修理工場に出入りをする
その工房では、さまざまなピアノが修理され、去ってゆく
ひとつひとつのピアノの音色や、ピアノの歴史、
それから、一台のピアノ自体が辿ってきた歴史まで
長編の随筆のような形で書かれている
著者自身が、久しぶりにピアノのレッスンを受ける過程もある
ピアノの工房に集う人々の様子も描かれていて
人とピアノの入り交じってつくられる
パリでの生活模様、のようなものも見られた気がする

アメリカ人らしい、健康的な文章だった

いろいろなピアノの話を読んで
実家のピアノことを思い出す

よくわからないメーカーだったので
さてどこだったか、と
さっそく実家に尋ねてみた

浜松のフローラルピアノという会社
earl windsorというロゴ
手作りのピアノだということだった
時々調律師の人が来て調律をしている時、
それから、内緒で蓋を開けた時の
少しすっぱいような匂いをよく覚えている

小さなころ
ピアノの音がきたない、よく云われていた
弾き方に問題がある
指の置き方が悪いのだ
自分でも音が汚いことがわかっていたから
どうにかならないものかと、腐心をしつつ
どうにもできずに悲しくなったのを
今改めて、ピアノを弾きながら感じている
いまだに、どうしようもできない

でも、同時に
指を下すだけで音が出る、という
あの、ピアノの音と同じぐらい
鮮やかな色の驚きや喜びを
今でもまだ、ピアノを弾く度に
感じられるということは、幸いだと思う

2009/08/08

夏を見る


一年中夏なのだから
今更夏の風物詩、というようなものは
ないのだろうと思っていた
例えば6月に満開になる火炎樹などは
季節を思い出させるものなのだろうけど
花の他は、
私の知る限り
この5ヶ月ずっと、緑で
大きな変化がない

でも、ここのところ風が強い
毎朝、窓から見える街路樹の葉が
のんびりと空を飛ぶ鳥の翼のように
ゆったりと揺れている

窓から木々を見下ろすと
新しい葉が出てきているので
緑が、手前にくるほど明るくなる濃淡になっていて
若い葉が撓るのを見るのが
朝の習慣になる