2009/02/19

赤い本など


古い本にはがきサイズに製本されたものがあって
布ばりの表紙に、紙の表題と絵が貼ってある。
鳥についての話だったので、銅版の繊細な線の鳥の絵でした。

シンプルなのですが
きっとそのサイズと、絵の密度と、本の厚みがちょうどよくて
何ともすてきな本だと思いました。
古くて版数も少なかったようで
とっても高くて、買えませんでしたが
ずっと記憶に残っていました。

ここから3月いっぱい忙しいので
もうゆっくりと製本している暇がなくなってしまいました。
当分のところのはこれで最後になりそうです。

お正月を境に私の周りであったことを書いた話と、
もう少し後にこれもまた、私が経験したことを書いた話。
どちらもさっぱり夢のない、どこまでも現実的な話です。

せめて、装丁の色ぐらいは、明るく。
というわけで、真っ赤な本にしてみました。
すべてを実家に持ってしまってももったいないので
以前組紐を置かせていただいていたお店に
手持ち無沙汰な方がちらりと読めるよう
置いていただくことになりました。

小さな小さな学級文庫のような感じで
並べていただいています。

2009/02/16

利根の、河川敷の、空







昨日は随分と懐かしい場所に往きました。
以前展示をさせてもらっていた美術館へ往く道すがらの河川敷で
駅伝大会


走るか走らないか、、、、
一応一週間前から調整をしましたが
結局用なし、走らないことになり、荷物もちをしていました。

日がさっぱり顔を出さず
川沿いは風も冷たくて
コースである堤防の上はふきっさらし。
大会が始まる前のコースを軽く走りながら空を見上げると
ラジコンの飛行機と、成田から出る飛行機が
時々空を横切っていきます。

それを見てふと、
以前対岸の岸辺でおにぎりを食べたのを思い出しました。
美術館での打ち合わせの帰り
夏の初めの気持ちのいい時季で
お金がないから家で作ったおにぎりを持参していきました。


相変わらず空は広くて、
でも、曇ってどんよりした色は、もちろんまったく違うから
雲と同じような色の飛行機や
初夏の色鮮やかな若草色の代わり
中学生や出場者のみなさんの
色とりどりのジャージがちらばっているのをぼんやり見ていました。

さて、荷物もちの方はあまり意味もなくて、
走らないのにたすきを渡す場所の
独特な緊張感だけを一身に感じてしまいながら
どんどんと入ってくる
真剣で美しい表情の人たちを
何だかまぶしいような気持ちで見ていました。

私が荷物を持っていた2チーム
片方は、歳をまったく感じさせない強い走りのおじ様方と
若人たちのすばらしい追い上げで堂々の2位
そして、私が声を掛けられていた方のチームは
紆余曲折?の末に堂々のドベ、でした。


たすきをつなぐことが大切、それは果たされました。
個人競技だから好きなジョギングだと思っていたけれど
伝えられたり、つながっていったり、渡されたり、ゆだねられる、ということは
一人ではできない。
その醍醐味を、脇でちらりとですが、見ることができました。



大会も閉幕式のころになると晴れ間が出てきて
急にひばりが鳴き始めました。
よく見ると、川岸に近い空き地にはオオイヌノフグリが青くて小さな花を咲かせていました。


季節もまた、次につながる頃のようです。

了解なく勝手に、寒そうなおじ様と若人の、それから空の写真を。
















2009/02/05

上質ポップス


 先々週辺りからずっと頭の中をまわっているのが
 今更の、キリンジ
 昨年に新しいアルバムを出しているようですが
 私が聴いているのは5年前のもの。

 以前一緒の仕事場で制作をしていた友人が
 大好きでよく、聴いていました。
 何となく気になるのだけど
 何となく音の浮き方にだまされて
 何となく聞き流している、程度でした。

 今更、なのは、きちんと歌詞を聴いたから
 それから、リズムがやたらと凝っているから、でした。

 聞き流していると、さっぱり歌詞など入ってこないはずなのですが
 あれ?と思い、気になって検索などしてみると
 つまらない詩よりも、
 よほど空気を含んだことばだったりして
 音と声とことばが、合っている。
 
 youtubeなどでライブを見ると
 何だか申し訳ないけれど、あまり顔は冴えない。
 でも、ほとんど無表情で唄う感じが
 これもよく、曲と合っている。

 おもしろい兄弟だな、と思うのでした。

 気に入っているのは「奴のシャツ」と「愛のcoda」という曲で
 歌詞の質は全く違うのだけど
 どちらも曲全体がまあるい巨大な乳白色の風船のようで
 その中に入ると、少し感傷的だったり無気力だったりするのだけど
 どうも、私には心地いいようで、
 もうしばらく、聴いていられそうです。

 それから、もう一つ、
 多分、8分の7拍子の曲があって、
 それに、嵌っています。
 聴きながらずっと、「1、2、3、4、5、6、7、1、2、3・・・」
 と数えているのでした。

 

向かない職業


 また、2月になり、昨日、非常勤先の3年生の最後の授業がありました。
 一昨日は来年度はもうやらない非常勤先の最後の出勤。

 この仕事が板についている人ならば、
 最後に素敵なことばでも残して立ち去れるのかもしれませんし、
 社会に出てゆく子達に、教訓の一つや、背中を押す格言を
 贈ることもできるのでしょう。


 私は毎年、この時期になると、
 ああ、この仕事は本当に向いていないな、
 と思います。
 去っていってしまうことにも少なからず動揺するし、
 居なくなることがどういうことなのか、今ひとつ想像できないまま
 何となく、お別れの挨拶をして、別れてしまいます。


 情けない話ですが、
 ことばよりも気持ちが先に出てしまうので
 何だか涙ぐんでしまったりして
 でも、この子達はそこまでではないんだろうな
 などと、必死に冷静になろうとしたりしています。
 この季節を慣れようとは思わないけれど、
 いくらの準備もできないようでは、本当にいけない、そう思いました。
 きちんと、ありがとうございました、とも云えなかった子達に
 とても、失礼だった。

 だから、来年度からは少し腰をすえて
 仕事ときちんと向き合ってゆこうと思っています。


 あまりに未熟で、教える対象の人たちに還元できるものが少ない。
 でも、だから、その分
 違う土地で吸収できるものがまだまだあるはずだと、
 自分の可能性に、思いを馳せられる。
 その限界を、いつか感じてしまうときが来るだろうから、
 その前に。
 どうしても、動かなくてはならないような気がします。


 私が手を散々焼いた、高校の子
 お昼休みに自転車のメンテナンスをしていました。